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【CDIメディカルアイ】海外ヘルスケアイノベーション

海外ヘルスケアイノベーションへのアプローチ

 

1. イスラエル・ドイツ事業の戦略的意義

CDIメディカルでは、イスラエル・ドイツの主にヘルスケアスタートアップ企業を対象とした日本市場参入支援をしています。両国ともに、多くのスタートアップ企業が優れた医療技術・製品を開発している点で共通します。リソースが限られるスタートアップ企業を支援することにより、日本に新しい医療のツールを導入する機会があると考え、事業を開始しました。現在、「デジタルヘルス」と「バイオ技術」を中心に、複数のプロジェクトを進めています。

本事業は、弊社がコンサルティングファームとして、具体的な事業機会の提案を行うネットワークを拡充することと、先端的な医療プラクティスやビジネスモデルのナレッジを蓄積することを戦略的な意義として位置付けています。医療制度の異なる海外の医療技術・製品を日本に導入することは容易ではありませんが、一方で環境が異なる海外にこそ、日本の医療の発展に資するイノベーションのヒントがあると考えています。

4月及び5月のコラムにおいては、弊社でイスラエル・ドイツ事業を担当している杉本・王が、ドイツ、イスラエルの最新の動向についてご紹介させて頂きます。

【図:弊社のイスラエル・ドイツ事業イメージ】

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 2. ドイツにおける薬の提供に関するイノベーション

薬のイノベーションと聞くと、新薬の開発を思い浮かべがちですが、薬の提供方法にもイノベーションが起きています。ドイツから2つの事例をご紹介します。

1つ目は「DocMorris」という企業です。ドイツにおけるオンラインファーマシーのリーディング企業で、OTC医薬品のみならず処方薬を含めて、患者の自宅に直接配送するプラクティスを構築しています。日本においても、近年、国家戦略特区におけるオンライン服薬指導の取り組みが注目されています。

関係者に創業の背景を伺いましたが、生みの苦しみの中で生まれた事業であると感じました。ドイツには、ひとりの薬剤師が最大4つの薬局しか運営出来ないという厳しい規制がある中で、規制の異なる隣国のオランダから薬を配送する方法で事業を築きました。様々なプレッシャーの中で、ミスのない完璧なオペレーションを構築し、薬を出来る限り便利に、かつ低価格で提供する価値を創出しました。2016年時点で、164万人のアクティブユーザーを抱え、およそ450億円の売上を上げるまで成長しています。(DocMorrisの親会社「Zur Rose Group」公表資料)

創業の背景はヨーロッパ特有のものであるため、日本に適用することは出来ませんが、オンラインによる薬の提供というオペレーションプラクティスは、大いに学ぶ点があるように感じます。

2つ目は「DiHeSys」という企業です。患者ごとに、最適な形で薬を提供する2D/3Dプリンター技術を開発しています。具体的には、患者ごとに最適な用量で薬を提供することや、複数の薬を服用する患者に対して薬を1剤にまとめて提供することが挙げられます。

日本でも問題視されていますが、ドイツでも、特に複数の薬を服用する患者について、服用のコンプライアンスが低く、多くの薬が服用されないまま捨てられており、この課題を克服することを目的としています。現状はまだ開発段階ではありますが、患者の服用コンプライアンス向上に加え、薬局等における医療者の業務負担軽減に繋がる場合は、発展の可能性があるように感じます。

3. スタートアップが躍動するベルリン

ドイツの首都であるベルリンは、以前は「ベルリンの壁」に象徴されるように歴史的な街という印象を持っていましたが、実際に訪問すると、非常に若く活気に溢れた街で、印象が大きく変わりました。街の至る所に絵を発見し、芸術的な感覚を受けます。

近年、ベルリンはヘルスケアスタートアップ創出の街としても注目されています。シリコンバレー等と比較して物価が安いことに加え、過去に東西ベルリンそれぞれに病院や研究機関があり、統合された現在は病院や研究機関が狭い範囲に集積されている環境も、ヘルスケアスタートアップの創出に寄与しています。ベルリンには、500を超えるヘルスケアスタートアップ企業が、およそ130の病院と35の大規模な研究機関と連携しながら、新たな技術・製品の開発を進めています。(LABIOTECH公表記事)

先月我々は、デジタルヘルスにフォーカスしたインキュベーション組織を訪問しましたが、おしゃれなオフィスの2フロアに、百を超えるスタートアップ企業が、部屋の壁に付箋を貼り巡らせて、事業開発に励んでいました。インキュベーション組織は、病院や保険会社、製薬・医療機器企業等と連携し、スタートアップ企業を支えるバックアップ体制を構築しています。弊社は、今後も特にデジタルヘルスを中心として、ベルリンのネットワークを拡充して参ります。

今月はドイツの最新の動向について、ご紹介させて頂きました。来月のコラムでは、イスラエルの動向について、ご紹介させて頂きます。

文責 杉本 宗優

杉本3

 杉本宗優(すぎもと・むねまさ)

株式会社CDIメディカル主査、イスラエル・ドイツ医療機器担当。

慶応義塾大学総合政策学部卒、ワシントン大学オーリン・ビジネススクール(MBA)、KPMGあずさ監査法人、ノバルティスファーマ株式会社経営計画部を経て現在に至る。

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企業情報

CDIメディカルは、国内初の独立系経営戦略コンサルティングファームであるコーポレイトディレクションが設立した、メディカル・ヘルスケアに特化した経営戦略コンサルティングファームです。 業界に関する専門的知見と、国内外医療関係者との密接なリレーションシップを基盤として、企業や医療機関の経営課題を解決すべく様々なサービスを提供しています。

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