日中関係が“難しい”そうです・・・
日本では2月8日に衆議院議員選挙が行われ、高市首相率いる自民党が歴史的な大勝をしました。一つの政党が単独での3分の2超を獲得するのは戦後初のことで、安定政権でどのような政策が進められることになるのか、その動向が注視されるところかと思います。ただ、こと日中関係については“関係悪化”といったキーワードが飛び交っており、しばらくは難しい局面が続くとみられているようです。
中国で事業活動する日本企業の団体である「中国日本商会」は、2/10に中国の景況および事業環境認識に関するアンケート結果を発表しました。その結果では、2026年の投資は59%の会員企業が「増加または維持する」としており(前年比3%増)、政治とビジネスはある程度“別の話”となっているようにもみえますが、日中関係の悪化が企業活動に影響を与える懸念の声もあがっています。
こうした状況の中では、「今は中国の話は慎重にした方がよい」「事業として取り上げるのは難しい局面だ」と感じている方も多いのではないでしょうか。しかし、そうした対応は戦略的といえるでしょうか。むしろこうした機会にあらためて中国について落ち着いて考えてみる、というのもよいのかもしれません。
中国のいまと第15次五カ年計画が示す方向性
中国が大国であることは議論の余地がないところだと思います。名目GDPでは2010年に日本を抜いて世界第2位の経済大国になっています。それだけではなく、例えば製造業付加価値額でも世界のトップを10年以上キープしていますし、自然科学の論文数でも世界1位です。中国は2015年の「中国製造2025」以降、“世界の工場”から“技術先進国”へ変貌を遂げている状況です。
2026年は第15次五カ年計画がはじまります。この計画からは、中国が経済成長一辺倒から脱却し、より持続的に“質”の成長を目指す傾向にあることがわかります。また第14次計画からの方向性を継続して、国内市場を重視した方向性になるとみられています。自国産業の優遇策は日本企業にとっては不利に働く可能性が高いということでもあり、そういう意味では中国はなかなかに“難しい国”ということがいえるかもしれません。実際に、半導体や自動車などのいくつかの産業分野では事業を縮小・撤退する日本企業が出てきているようです。
中国との向き合い方を変えるとき・・・なのかもしれません
確かに従来の延長線上で“中国市場=ものを売る先”として捉えることは難しくなってきているのかもしれません。ただ経済成長率が鈍化しているといっても、もちろん中国は依然として市場という意味でも世界随一の市場です。また、それ以上に、新しい技術が社会に実装されるスピードは他の国や地域ではないものがあり、その圧倒的なユーザー数やデータ量、規制・制度の変化などの情報は日本国内では得られないのではないかと思います。
現在の中国の状況を考えると、従前の関係性を前提に中国を見続けることには今後はリスクがあるのかもしれません。日本企業は中国に対する向き合い方そのものを変える必要があるのかもしれません。例えば、中国を“ものを売る先”ではなく、“研究開発の拠点”として捉え直すことはできないでしょうか。すでに一部の日本企業は、中国を「学習環境」と位置づけ、開発体制や研究機能の再設計を進めているようでもあります。日本ではできないことを、中国で“研究として”検証し、その知見をグローバルに活かすという発想は、お互いにとってもメリットのある在り方のひとつかもしれません。
メディカル・ヘルスケア分野では・・・
こうした在り方はメディカル・ヘルスケア分野においても有効に機能するように思います。ご存知のとおり日本は65歳以上が人口の29%を超える超高齢社会であり、2025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になりました。医療費の増大以上に生産年齢人口の急速な減少が問題として現在化してきています。こうした状況の打開には医療Dxの推進は不可欠なのですが、政治的・社会的な背景からなかなか進まないのが現状であったりします。
一方、中国は日本以上の速度で高齢化が進行している国ですが、医療Dxや医療AIの分野では大規模な実装と検証が進められています。第15次五カ年計画においても「デジタル経済への支援」や「大健康産業への支援」において、こうした分野への重点的な支援政策が盛り込まれており、すでに中国国内では広範囲で医療Dxサービスが展開され、1つのエコシステムを形成しつつあります。診療支援AIの学習検証、病院運営における医療Dxの実証、慢性疾患予防モデルの研究開発などの、日本国内では時間がかかりそうなテーマにおいて、中国で研究開発を行う、という選択肢はあるのかもしれません。
これから中国とどう向き合っていくべきか?その答えはひとつではなく、企業やテーマによって異なるのだと思います。しかし、状況が難しいから置いておく、というのが最もリスクの高い選択ともいえるのではないでしょうか。まずは、「今の中国がどうなっているのか」を知ることから始めてみませんか。そこから次の10年の戦略がみえてくるのかもしれません。
CDIメディカルでは、今改めて中国という国との向き合い方について、さまざまな角度から議論をしています。ご関心のある方は、ご議論・情報交換の機会をぜひ頂ければと思います。
文責:伊藤 愛

伊藤 愛(株式会社CDIメディカル 取締役)
大阪大学大学院薬学研究科修士課程修了(薬剤師)。京都大学大学院医学研究科修士課程修了。
商社、独立系ベンチャーキャピタル、ヘルスケア・バイオベンチャー企業、経営コンサルティングファーム等を経て現職。ライフサイエンス・ヘルスケア分野を中心に、中期経営戦略等、新規事業戦略、海外展開、オープン・イノベーション戦略等、戦略立案から実行支援を含むコンサルティングを実施。
