【CDIメディカルEye】モバイルヘルス製品を事例とした医療機器開発に関わる制度(その3)

今回は、前回に引き続き、承認審査について具体的な内容をモバイルヘルス製品の事例でみていきます。前回は家庭用心電計プログラム及び家庭用及び家庭用心拍数モニタリングプログラムでしたが、今回は医療用の禁煙治療補助システムが事例です。

1.禁煙治療補助システムとは

「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及び CO チェッカー」は、バレニクリンを使用して禁煙治療を行うニコチン依存症患者に対し、標準禁煙治療プログラム*1を実施する際に使用することで禁煙治療の補助を行うシステムです。治療用アプリとして国内初の承認(医療機器(機械器具21内臓検査用器具))を2020年8月に受け、同年12月に保険適用が認められました。

2.禁煙治療補助システムの承認審査について

では、ここから医療機器「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及び CO チェッカー」(以下、「本製品」)の承認審査についてみていきます。なお、説明における情報は、医薬品総合機構のホームページから入手した資料*2に基づいています。

① 承認申請資料について

本製品は、既に製造販売の承認を受けている医療機器と構造、使用方法、効能、効果又は性能が明らかに異なる医療機器として新医療機器に分類されるため、承認審査の対象となる添付資料の申請の区分が新医療機器として、イ~チ(前回コラム(その2)3①参照)の全ての資料が求められています。株式会社CureApp(以下、「申請者」)により2019年12月6日に申請がなされました。申請者が提出した本製品の添付資料の1から9までにイ~チまでの資料が含まれています(下図参照)。なお、「8.臨床試験の試験成績等」について参考に結果を載せております。

② 承認審査の流れ

 承認審査については、上述のとおり本製品は新医療機器に該当するため、まず、PMDAによる書面審査がなされて、厚生労働省に審査報告書として報告されます。厚生労働省では、厚生労働大臣により薬事・食品衛生審議会に諮問され、同審議会薬事分科会医療機器体外診断薬部会で審議がなされます。その審議結果の答申を受けて、厚生労働省(医療機器審査管理課)において審査結果報告書が作成されます。

③ 審査内容

まず、PMDAにより行われた書面審査について、審査における重要な指摘事項をみていきます。

下図に、審査における主な指摘事項と申請者の回答・対応について示します。

書面審査においては、提出された資料について専門協議の議論を踏まえて総合的に評価した結果、本品の有効性及び安全性に特段の問題はないと判断され、2020年5月28日に審査報告書がまとめられました。

2020年6月19日に薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会(以下、「部会」)が開催され、本製品の審議が行われました*3

部会においては、まず、PMDAにおける書面審査の内容が説明され、各委員からの質問に参考人、厚生労働省(医療機器審査管理課)及びPMDAが回答する形で審議は進められ、主な内容としては、本製品のアプリのアルゴリズムの変更の際の手続きの必要性、COチェッカーによる一酸化炭素濃度の変化、サイバーセキュリティ対策、オンライン診療における使用、対象群の記録が欠如していた臨床試験結果の評価が妥当であるか等について審議されました。

審議の結果、特定保守管理医療機器*4として指定するとして部会において承認され、部会審議の結果が薬事・食品衛生審議会に報告するとされました。

以上のような審査を経て、審議結果報告書(2020年6月19日)が厚生労働省(医療機器審査管理課)により作成されて、申請から6か月後の2020年8月21日に医療機器として厚生労働大臣により承認を受けました。

今回は、医療用の禁煙治療補助システムを事例としたモバイルヘルス製品の承認審査についてみてきました。次回は、医療機器の保険適用について、全般的な制度を解説していきます。


*1:ニコチン依存症患者を対象とし、「禁煙治療のための標準手順書 第 7 版」(2020年4月)(日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会、日本呼吸器学会 編)に記載されている。

*2:PMDAホーム>審査関連業務>承認審査業務(申請、審査等)>承認情報>医療機器を参照(https://www.pmda.go.jp/review-services/drug-reviews/review-information/devices/0019.html)

*3:ホーム > 政策について > 審議会・研究会等 > 薬事・食品衛生審議会 (医療機器・体外診断薬部会)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03635.html)

*4:特定保守管理医療機器とは、医療機器のうち、保守点検、修理その他の管理に専門的な知識及び技能を必要とし、適正な管理が行われなければ疾病の診断、治療又は予防に重大な影響を与えるおそれがあり、厚生労働大臣が指定するもの

文責:岡野内 徳弥

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岡野内 徳弥(株式会社CDIメディカル ManagingConsultant

静岡県立大学大学院薬学研究科修了、桐蔭横浜大学法科大学院修了、マサチューセッツ大学ローウェル校ビジネススクール修了。博士(薬学)、法務博士、MBA(経営管理学修士)

厚生労働省、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、国立医薬品食品衛生研究所、環境省、法務省、神奈川県を経て、現在に至る。