【CDIメディカルEye 】“薬機法の改正について(その8)”-ご準備は大丈夫ですか?-

薬機法の改正について(その8)

薬機法改正についてのコラム(その8)です。今回は、2021年8月1日に施行されました信頼確保のための法令遵守体制等の整備として「虚偽・誇大広告による医薬品、医療機器等の販売に係る課徴金制度の導入」について解説いたします。

1.改正事項の背景

広告は製品の周知、売込みのために欠かせないものですが、医薬品、医療機器等に関わる広告については、薬機法により以下のように定められています。

・医薬品等の名称、製造方法、効能・効果、性能に関する虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布の禁止

・医師等が保証したと誤解を与えるおそれのある記事の広告・記述・流布の禁止

・堕胎暗示、わいせつ文書・図画の使用禁止

これは、医薬品、医療機器等の広告については、情報が正確に伝えられなければ適正な使用が害され、適切な医療の機会を逸するなどその弊害が重大であることから、虚偽・誇大な広告な禁じ、その監視指導により、医薬品、医療機器等の適正使用を確保するためとされています。

一方、従前の制度では、虚偽・誇大広告に違反した場合の罰金は個人・法人共に200万円以下となっていたため、違法行為によって得られる経済的利得に対して、抑止効果が機能しにくいといわれていました。なお、多くの方が記憶にある高血圧症治療薬の学術論文のデータ改ざん事件では、行政処分として業務改善命令は出されましたが、罰金等を伴う薬事法(薬機法)の広告違反とはされていません(最高裁判決令和3年6月28日)。

また、広告の違反に関しては、①近年、虚偽・誇大広告や広告・販売等の違反事例が散見され、減少していない状況にある、②薬機法上の業許可を持たない事業者による違反事例では、許可取消や業務停止命令といった行政処分ができず抑止効果が働きにくい、③違反は経済的利得を主たる目的としており、特に医薬品に関する虚偽・誇大広告の事例に対して、当該違法行為によって得られた経済的利得を徴収するべき、④欧米においては、違法行為により得られた経済的利得を徴収できる罰則、行政処分が存在していることが課題として指摘されました。

このような経緯から、経済的利得の是正を通じた違法行為の抑止を目的として、現行の行政処分によっては抑止効果が機能しにくい実態があることを踏まえ、違法行為の抑止を図るため課徴金制度の導入が定められました。

2.課徴金制度

課徴金とは、違反行為防止という行政目的を達成するため,行政庁が違反事業者等に対して課す金銭的不利益のことです。今回導入された薬機法以外には、独占禁止法、金融商品取引法、公認会計士法、景品表示法で導入されています。それぞれの法律によって、目的や対象は異なるのですが、違反行為の摘発に伴う金銭的不利益により、その経済的誘因を減少し、違反行為の予防することが狙いです。また、合わせて違反広告の中止など措置命令制度も設けられています。

ここにおいて重要となるのは、どういった行為(対象行為)が、どのような手続き(行政処分の流れ)で、どの程度の課徴金(算定方法)が課されるのかです。

まず、課徴金対象行為については、薬機法第66条第1項の規定に反する行為とされています。

これは、冒頭に示した「医薬品等の名称、製造方法、効能・効果、性能に関する虚偽・誇大な記事の広告・記述・流布の禁止」に違反する行為です。しかし、実際にはどこまでが広告なのか、その広告が虚偽・誇大広告に該当するのかの判断により違反行為の対象となります。これらについては、「広告の該当性」(平成10年9月29日医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知)、医薬品等適正広告基準(平成29年9月29日薬生発0929第4号厚生労働省医薬・生活衛生局長通知)という行政通達で示された内容(解釈)が判断基準となっています。

次に行政処分の流れですが、これは厚生労働省と都道府県が収集した情報から調査が開始され、行政手続きに則って行政処分がなされます。その後に課徴金額の算定のための調査や判断が厚生労働省において行われ、課徴金納付命令が出される仕組みになっています。かなり複雑ですが、下図を参照してください。

そして、課徴金額の算定方法ですが、課徴金額は「課徴金対象期間」に取引をした「課徴金対象行為(虚偽・誇大広告行為)に係る医薬品等」の「対価合計額」に、4.5%を乗じて得た額となります(薬機法75条の5の2第1項)。ただし、同一事案に対して景品表示法の課徴金納付命令がある場合は、売上額の3%を乗じた額(同法の課徴金算定額)は控除されます。

また、課徴金対象期間は、①「課徴金対象行為期間」+⓶「課徴金対象行為をやめた日から6か月を経過する日、又は、当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置をとった日のいずれか早い日まで」が原則となっています。ただし、②の間に「課徴金対象行為に係る医薬品等の取引をした」場合には、 ①の期間(課徴金対象行為をした期間)に、当該「課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間」を加えた期間(最長3年間)となります(薬機法75条の5の2第2項)。

以上、今回は「虚偽・誇大広告による医薬品、医療機器等の販売に係る課徴金制度の導入」について解説いたしました。次回以降も改正事項について解説していきます。

文責:岡野内 徳弥

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岡野内 徳弥(株式会社CDIメディカル マネージングコンサルタント)

静岡県立大学大学院薬学研究科修了、桐蔭横浜大学法科大学院修了、マサチューセッツ大学ローウェル校ビジネススクール修了。博士(薬学)、法務博士、MBA(経営管理学修士)

厚生労働省、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、国立医薬品食品衛生研究所、環境省、法務省、神奈川県を経て、現在に至る。