【CDIメディカルEye】モバイルヘルス製品を事例とした医療機器開発に関わる制度(その5)

今回は、医療機器の保険医療制度におけるモバイルヘルス製品として保険適用された具体的な事例を解説していきます。

1.保険適用されたモバイルヘルス製品事例

モバイルヘルス製品として保険適用された事例として、「CureApp HT 高血圧治療補助アプリ」(以下「高血圧治療補助アプリ」)をみていきます。この製品は、成人の本態性高血圧症患者に対して、患者ごとに行動変容を促し、生活習慣の修正を行うことで降圧効果を得ることを意図した治療用アプリとして、2022年4月に承認(医療機器(疾病治療用プログラム))を受け、同年9月に保険適用が認められたものです。

患者はスマートフォンのアプリで、家庭血圧や生活習慣等を記録し、医師は専用アプリを用いて、患者の家庭血圧を閲覧し日々の行動や診療時間外での行動を把握することでより具体的指導をするというモバイルヘルスとしての特徴があります。(製品概要について下図を参照)

2.高血圧治療補助プログラムとして保険適用

前回(その4)で示しましたが、保険適用をうける医療機器は「保険医療材料」と呼ばれ、「A1(包括)」、「A2(特定包括)」、「A3(既存技術・変更あり)」、「B1(既存機能区分)」、「B2(既存機能区分・変更あり)」、「B3(期限付改良加算)」、「C1(新機能)」、「C2(新機能・新技術)」、「R(再製造)」及び「F(保険適用に馴染まないもの)」に区分されます(前回(その4)「2.保険医療材料制度とは」参照)(リンク1)。

この高血圧治療補助アプリは、C2(新機能・新技術)として新技術に区分決定されました。これは、通常、診療報酬の技術料には含まれず、医療機器の保険請求価格が定められる区分ですが、この製品は新規技術料として評価されています。それには、保険適用申請者が特定保険医療材料ではなく新規技術料として保険償還価格を希望したこと、地域包括診療料として生活習慣病管理料が高血圧症を主病とする患者の高血圧の治療管理に加算されていることなどが考慮されたと考えられます。

保険適用申請者からの準用を希望する技術料は、診療所で用いる場合の初回保険料として、在宅振戦等刺激装置治療指導管理料(導入期加算140点)及び血糖自己測定器加算(月90回以上測定する場合1170点)などが示されました。しかし、中医協においては、準用技術料として禁煙治療補助システム指導管理加算(140点)及び血糖自己測定器加算(月60回以上測定する場合830点)が定められました。これは、ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の治療補助アプリ(同一申請者製品)との類似性が考慮されたと考えられます。

なお、保険適用申請の際には、申請する製品の推定適用患者数や市場規模予測を示すことが求められています。(保険適用の概要については下図参照)

モバイルヘルス製品は、その多くがプログラム医療機器として薬事承認され、治療として実際に使用されるものは保険適用を受けることとなりますが、従来からある医療機器とは異なる特徴を有するモバイルヘルス製品の評価は、既存の制度の中では難しい状況が生まれています。

このような新たな状況について、プログラム医療機器の評価を明確化する観点から、医科診療報酬点数表の医学管理等の部に、プログラム医療機器を使用した場合の評価に係る節が新設されるなどの対応が行われています(前回(その4)「5.その他」参照)(リンク2)。

モバイルヘルス製品は、医療DXとして重要な役割を果たすものであり、その使用実態は「リアルワールドデータ」として蓄積が可能なものです。それらのデータを解析することで治療実績を把握でき、個人の健康のアウトカムを評価することができます。今後、保険適用をするための評価、そして保険適用後の診療の効果の評価に、「リアルワールドデータ」を適切に活用した評価手法が期待されます。

今回は、バイルヘルス製品として保険適用された具体的な事例についてみてきました。「モバイルヘルス製品を事例とした医療機器開発に関わる制度」については、5回のシリーズで終了となります。これまで、お読みいただいた方々に感謝申し上げます。

文責:岡野内 徳弥

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岡野内 徳弥(株式会社CDIメディカル ManagingConsultant

静岡県立大学大学院薬学研究科修了、マサチューセッツ大学ビジネススクール修了。

博士(薬学)、経営学修士。

厚生労働省、独立行政法人国立病院機構、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、国立医薬品食品衛生研究所、環境省、法務省、神奈川県を経て、現在に至る。